
こんにちは。日本腸セラピー協会代表の加藤仁基です。
11月は、朝晩の冷え込みが一段と深まる時期。
日中との気温差も大きく、空気は乾燥し始め、体も心も「冬モード」への切り替えが必要な時期です。
中医学では、11月は「冬の入り口」とされる立冬を迎えます。
五行では冬は「水」に属し、腎(じん)と膀胱が司る季節。
腎は生命エネルギー(精)を蓄える臓であり、体の根本的な力を支える存在です。
気温が下がると、この腎の働きが弱まりやすく、冷え・むくみ・疲労感・便秘・睡眠の乱れなどが出やすくなります。
腸セラピーの現場でも、11月は「お腹の冷え」「朝の便通が重い」「気分が沈みがち」といった声が増える季節です。
今回は、東洋医学の養生理論と腸セラピーの視点を合わせて、冬の始まりに意識したい「腎と腸を守る11月の腸ケア養生」をお伝えします。
1. 冬のはじまりは“腎と腸”を温めて守る

中医学では「腎は生命の根」「陽気の源」といわれ、冷えは腎を最も弱らせる要因です。腎が冷えると、全身のエネルギーが巡らず、腸の働きも鈍くなります。
特に、秋から冬にかけては「陽気(体を温める力)」が体の内側へ沈み、表面の防御力が落ちる時期。外からの寒さや乾燥が腸に直接影響しやすくなります。
この時期は、「腎と腸を温めて守る」ことが第一の養生です。
- 朝起きたら白湯を一杯飲んで体を目覚めさせる
- 腰・お腹・足首にカイロや腹巻きをあてて“腎のエリア”を温める
- 生野菜・冷たい飲み物は控え、温野菜・スープを中心にする
体を温めることは、腸の血流を促し、自律神経を安定させる最も手軽なセルフケアです。「冷え」を防ぐことが、「腎を守ること」につながります。
2. “黒い食材”で腎を養い、体のエネルギーを蓄える

10月は白い食材で「肺と大腸を潤す」時期でしたが、11月は一転して、“黒い食材”で腎を補うのがテーマです。
五行で「腎」は“黒”に属し、黒い食材には腎の働きを助けるミネラルや抗酸化成分が多く含まれます。
おすすめは次のような食材です。
- 黒ごま・黒豆・黒きくらげ:腎を養い、血を補い、潤いを保つ
- ひじき・わかめ・昆布:水分代謝を整え、むくみを防ぐ
- 小豆・くるみ・栗:疲れや冷えを緩和し、エネルギーを蓄える
- きのこ類:腸の善玉菌を増やし、免疫力を高める
また、五味のうち「鹹味(かんみ/しおからい味)」は腎を潤す働きがあります。ただし、塩分の摂りすぎは腎を傷めるため、天然塩や味噌などで“やさしい塩味”を意識しましょう。
【ポイント】
黒い食材は“温かい調理法”で摂るとさらに効果的です。煮込み料理やお味噌汁に黒ごまや海藻を加えるなど、体を冷やさずに腎を養う工夫を取り入れてください。
3. 陰陽のバランスを整える:「温めすぎず、潤いも忘れずに」

冬=冷えの季節という印象が強いですが、腎を整えるには「温める(陽)」だけでなく、「潤す(陰)」ことも同じくらい大切です。
腎は「陰陽の根」とされ、どちらが欠けても体調を崩します。特に11月は、空気の乾燥により肺陰・腎陰(体の潤い)が不足しやすくなります。
そこで意識したいのが、“潤いのある温め”です。
- えごま油やオリーブオイルで内側から潤す
- 白きくらげ・れんこん・山芋など「潤い食材」を温かく調理
- 湯船につかる際は38〜39℃で15分、じんわり温めて保湿
体を温めすぎると、必要な潤い(陰)まで失ってしまうことがあります。冷やさず、乾かさず、「温めて潤す」のが11月の理想的な養生です。
4. 冬の朝は「冷やさず動かす」排泄リズムを

中医学では「大腸の時間」は午前5〜7時。この時間に体をゆるやかに動かすことで、自然な排泄が促されます。
ただし、冬の朝は寒く、陽気がまだ表に出ていません。無理に動かすよりも、まずは体を温めることが大切です。
- 起き抜けに白湯をゆっくり飲む
- 腹部をさすりながら深呼吸する
- 体が温まったら軽くストレッチをして腸を刺激する
「冷やさず、ゆるやかに動かす」。このひと手間が、朝の便通を整え、1日を軽やかに始めるコツです。
5. 心の養生:「恐れ」は腎を弱らせる

秋の「悲しみ」に続き、冬に気をつけたい感情は「恐(おそれ)」です。中医学では、恐れや不安は腎を傷めるとされます。
11月は、年末を意識し始めて心が焦ったり、不安が高まりやすい時期。だからこそ、心を静める時間が大切です。
- 夜はスマートフォンを早めに手放し、静かな時間を過ごす
- 温かいお茶を飲みながら、深く呼吸する
- 「今日できたこと」に意識を向けて、完璧を求めすぎない
腸セラピーの現場でも、ストレスが強いとお腹が硬くなり、呼吸も浅くなります。お腹がゆるむと、心もやわらぎます。体を温めることは、心を温めることでもあるのです。
まとめ:「ためる」季節に、静かに整える

11月は、冬に向けて体がエネルギーを“ためる”方向へと切り替わる時期です。10月までの「巡らせる養生」から、「温めて潤し、守る養生」へ。
- 冷えから腎と腸を守る
- 黒い食材と“やさしい塩味”で腎を補う
- 潤いを保ち、温めすぎないバランスを
- 冷やさず動かす朝の排泄リズム
- 恐れを手放し、心を静める時間を
この5つを意識することで、冬の体調はぐっと安定します。
腸を整えることは、体を温め、心を穏やかにすること。お腹がやわらぐと、呼吸が深くなり、気持ちにもゆとりが生まれます。
どうかこの冬も、「お腹がよろこぶ暮らし」で、穏やかな毎日をお過ごしください。
